家そのものにも「自重」があり、それに耐えるだけの強度が必要です。
それに加え地震や、豪雪地帯では屋根に積もった雪の重み、台風に見舞われる地域では風力にも耐えなくてはなりません。(図1)
このような外的な力をもやり過ごせるだけの強度を持っていなければ安全な家とは言えません。
建物が安全に成り立つために、計算に基づき安全性を確認するのが「構造計算」。
全ての建物は構造計算なしに安全性を確かめることはできません。
しかし、以前にもコラムでお話させていただいた通り、木造2階建て住宅の構造計算は法律で義務化されていないため、多くの住宅で構造計算がなされないまま建てられているのが現状です。
今回は、構造計算を検討する際に知っておくべき点についてお話します。
構造計算以外の計算じゃダメなの?
木造2階建て住宅は構造計算が義務づけられておらず、建築基準法施行令の技術基準を満たせば良いとされています。
この基準だとどの程度安全が確保されるのか、いくつかピックアップして見てみましょう。
①壁量計算
構造計算に代わる簡便な方法としてよく耳にする「壁量計算」。
耐震性については床面積に対して決められた量以上の耐力壁を設けることを決められています。
しかし、この規準を満たした建物を構造計算すると、20~40%ほど強度が不足します。
これは耐力壁以外の壁も地震の1/3程度を受け止めてくれる事を前提にしているためですが、最近はリビングの広い間取りや採光、導線のために開口部が大きく作られるケースが多いことから、雑壁の効果はあまり期待できません。
先日の熊本地震でも、壁量計算していた比較的新しい住宅の倒壊がみられました。
②4分割法
筋かい等の耐力壁の総量のみを規定してると、採光のため南側の壁が少なく、開口の少ない北側の耐力壁が多い偏った建物になります。
阪神・淡路大震災でこのような偏った壁配置をした住宅がねじれて倒壊する被害が多くみられたため、対策として耐力壁をバランスよく配置する4分割法という規準が定められました。
この規準は構造計算で偏りを示す指標の偏心率が0.3以下を実現できるよう取り決めされたものです。
しかし、構造計算では一般に偏心率0.15以下で設計されます。
また、2000年の基準法改正以前の住宅はこの検討も行われていません。
③梁の強度
木造2階建て住宅では、2階床や屋根の重量を支える梁について具体的な規準がありません。
スパン表という早見表やプレカット工場任せになっている場合も多いようですが、こうした住宅の検討を依頼されて強度やたわみの計算をしてみると強度や剛性が不足しているケースが少なくないそうです。
木造の場合、完成直後は大丈夫そうでも、木材は長期間力がかかり続けるとだんだん変形していくので、何年か経って二階の床が傾くなど、欠陥が生じる可能性があります。
④基礎
基礎についても、必要な地耐力が定められている程度で安全性を確保するための具体的な規定はありません。
このため、数年後や震度5強以上の地震の時に大きなクラックが入る可能性があります。
一般に安全性の検討を簡略に済ませる場合、強度不足にならないように詳細な計算をしたときに比べて高い安全率が設けられていますが、木造2階建て住宅等の仕様は構造計算をしたときよりも安全率が低い傾向にあります。
以上のように、構造計算をしないで家を建てる場合、不安な要素が多くなります。
構造計算する場合のメリットは?
構造計算をするメリットとして設計者と住まい手にとって安心材料になるのはもちろんのこと、柱・梁の一本一本に加わる外力が把握できるため、建物の弱点が客観的にわかり、よりよい対応が可能になります。
他にも、簡易壁量計算に比べてプランニングの自由度が増し、大きな開口部や変化のあるプランでも実現可能になります。
さらに、長期優良住宅など国が策定した構造強度と整合性が取れるため、強度認定や国が定める税制優遇処置などが受けやすくなる、履歴として構造計算書があれば将来の間取り変更に対応しやすくなるなど、その後のメリットもとても大きなものになります。
建てる前も建ててからも、ずっと安心して暮らせる家づくりには構造計算が不可欠と言っても過言ではないのではないでしょうか?
家づくりをお考えの方は、ご検討いただくことをオススメします。